恵比寿映像祭2026

恵比寿映像祭では、映像という言葉を限定的に用いるのではなく、映像をめぐる様々な選択肢に目をむけ、多様化する映像表現と映像受容の在り方を問い直してきました。芸術と映像が人にもたらしうるオルタナティヴな価値観(ヴィジョンズ)の生成を促し、存続させていくためのプラットフォームとして、発信を続けています。毎回テーマをかかげ、「映像とは何か」という問いを投げかけながら、国内外の映像表現を紹介し歳月を重ねるなかで、映像を取り巻く状況は大きく変化し、映像を規定する枠組みやテクノロジーも多様化しています。
恵比寿映像祭2026では、映像や写真の役割への問いかけを継続しながら、より柔らかな視点で社会状況の変化を考察します。映像祭をプラットフォームとして、様々な声を展開しながら、映像・写真だけでなく、サウンドや演劇などという異なる表現も、新たな試みとして取り入れます。また、3F展示室では、第2回コミッション・プロジェクトの特別賞を受賞した小森はるかの作品、および東京都コレクションが、総合テーマと連動して展開されます。今回ならではの組み合わせによって、複合的な視点の場を創り出していきます。

会期
2026年2月6日(金)~2月23日(月・祝)[16日間]
(2月9日[月]および2月16日[月]は休館)
※3F展示室のみ2月6日(金)~3月22日(日)
会場
東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス各所、地域連携各所ほか
時間
10:00–20:00(2月6日~2月22日/最終日[2月23日]は18:00まで)
※2月25日(水)~3月22日(日)の3F展示室は
 10:00–18:00(木・金は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
料金
展示無料
※一部のプログラム(上映など)は有料
※諸般の事情により、開館時期・内容などを変更する場合がございます。

あなたの音に|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight
―日花聲音―

いま社会は多様性の尊重を重視しています。しかし、人、文化や言語などの間にはたとえ共通点があったとしても、誤解、誤読は生じます。そして、戦争は止まず、格差は埋まらず、さまざまな摩擦の終わりが見えません。私たちはアンバランスで複雑な社会状況に直面しています。
恵比寿映像祭2026の総合テーマは、メインキュレーター・邱于瑄(チィウ・ユーシュェン)による台湾語が起点です。台湾語は口承で広がった言語で、19世紀に生まれた発音記号や、20世紀の漢字表記の展開を経て、多くの文献が編まれました(その中には1931年に出版された、台湾語–日本語の辞書『台日大辞典』なども含まれます)。日本語とも共通点が多く、いくつかの表記法が混在している言語です。
「日花1」(ジッホエ/Jīt-hue)と「聲音2」(シアーイン/Siann-im)を組み合わせた台湾語は、ひとつとして同じものがないさまざまな声音が響く空間に、木々の間から洩れた光が差し込む様子を現します。私たちを取り巻く環境では、重奏するように異なる声が行き来し、多声的に折り重なって響いています。
私たちは、長い歴史の変遷によりさまざまな文化が積層した台湾の言葉を導線に、いまの社会に存在する多様な文化、言語などが互いに影響し合う複層的な形に柔らかく光を注ぐ思いで、恵比寿映像祭2026を構成します。
写真、映像、サウンド、パフォーマンスなどを通じて、不協であったとしても響き合い、重なり合う思考や存在が交差し、視覚的・聴覚的なポリフォニー3を深く形成していきます。個々の声や形は消されることなく、複数の視点が交差して拡張されます。美術館に留まらず、恵比寿地域の複層的な空間で出会う数々の作品を通じて、あなたの柔らかな思索をお楽しみください。

  1. 木洩れ陽。雲間もしくは木の間などより洩れ来る日光。『台日大辞典』より
  2. 声音、音色、音、音声。
  3. 複数の独立したメロディーが同時に存在し、互いに調和し合うことを意味する音楽用語。共同参加が可能な開かれた構造という概念として、現代では哲学や文化領域など、さまざまな分野においても応用されている。

PROGRAM

開催プログラム

コミッション・プロジェクト|東京都写真美術館3F展示室

東京都写真美術館の継続事業として、恵比寿映像祭2023から始まった「コミッション・プロジェクト」。日本を拠点に活動するアーティストを選出し、制作委嘱した映像作品を“新たな恵比寿映像祭”の成果として発表します。恵比寿映像祭2026では、第2回コミッション・プロジェクトにて特別賞を受賞した小森はるかによる特別展示を、総合テーマと連動させながら具現化します。

東京都コレクション|東京都写真美術館3F展示室

東京都が所蔵するコレクション(資料・作品)は、都立ミュージアム(東京都江戸東京博物館、江戸東京たてもの園、東京都写真美術館、東京都現代美術館、東京都庭園美術館、東京都美術館)が管理しています。本展示では、東京都写真美術館の管理する作品だけでなく、恵比寿映像祭 2026 の総合テーマ「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」を紐解く視点として、「現代と歴史」を切り口に都立ミュージアムが管理する作品を横断的に展覧します。作品をリレーすることで漣(さざなみ)のようにわずかな齟齬や違和感を通して、多様な見方をあぶり出します。

展示|東京都写真美術館2F・B1F展示室・1F

長い歴史の中で文化や言語が変化し、多様な形が存在する今、私たちは写真・映像を通してどのように過去を顧み、記録をこれから残していくべきかを探ります。B1F展示室は、本祭の出発点になり、ここでは移動(遷徙)ということから語り始め、環境の中でいろいろな影響を受けることによる変化の過程を辿ります。異なる声が交差する中では共通点がありながらも、摩擦や誤解も生じる可能性があります。それぞれの作家が自らの背景から生み出した映像・写真の表現を通して、アイデンティティ、歴史記憶や社会という普遍的事柄への、多種多様な問いかけを提示します。総合テーマ「日花聲音」のイメージで、それぞれの独立した音(声)が繋がり、複合的なポリフォニーを生み出します。これらの音は特定の場所に留まることなく、美術館の様々な場所で展開し、映像祭全体を個々の声が包み込むかのように構成します。

上映|東京都写真美術館1Fホール

総合テーマに沿って劇映画から実験映画をはじめ、モーガン・クウェインタンスやチョン・ソジョンによる日本初公開の海外作品を含め、CCJによるデジタル修復後、本邦初公開映像も含めた小杉武久とタージ・マハル旅行団の特集など、多彩な作品が集まります。さらに、従来の上映の形に留まらず、上映と演奏を組み合わせた表現も加わります。また、第2回コミッション・プロジェクト特別賞受賞者である小森はるかの関連上映特集を行います。各上映後には、監督やゲストを招きトークを開催します。2025年に急逝した映像作家・大木裕之を偲び、第4回恵比寿映像祭および第1回コミッション・プロジェクトでの大木さんとの時間と、その豊かな創造の記憶に敬意と感謝を込めて、追悼上映を開催します。

ライヴ・イヴェント|東京都写真美術館1Fホール・スタジオ、展示室ほか

東京都写真美術館1Fホールやスタジオを会場に、従来の映像の枠を超えたパフォーマンス、ワークショップ、アーティスト・トークを展開します。恵比寿映像祭2026では、新たな試みとして演劇プログラムを取り入れ、さらにサウンドパフォーマンスも加わります。映像や写真という領域を拡張する、この場所ならではの体験をお楽しみください。

教育普及プログラム|東京都写真美術館1Fスタジオほか

恵比寿映像祭2026では、さまざまな世代の方にフェスティヴァルをより楽しんでいただくための教育普及プログラムを多数ご用意しています。お気に入りの作品を見つけたり、フェスティヴァルについて考えたり、制作を通して映像や写真についての理解を深めたり、など、展示とともにお楽しみください。プログラムは、事前申込制のものだけではなく、当日映像祭鑑賞途中にお気軽に参加できるものもございます。ご都合に合わせてぜひご参加ください。

オフサイト展示|恵比寿ガーデンプレイス センター広場、恵比寿スカイウォーク

デジタルとアナログを横断しながら、実験的プロジェクトを展開し、インターネット・アートで活躍するエキソニモ、個人と集団のアイデンティティに着眼し、映像やパフォーマンスなど多様な表現で制作するFAMEMEの作品を、恵比寿ガーデンプレイス センター広場および恵比寿スカイウォークに展開。訪れた人々すべてに新たな鑑賞体験を提供する屋外作品が登場します。

地域連携プログラム|地域連携各所

地域連携プログラムでは、例年より範囲を広げ、恵比寿近隣から複数の文化施設を新たに加えます。それぞれの文化施設では、選りすぐりの展覧会と多彩なイヴェントを開催します。また、各施設をめぐるシールラリーを通じて、フェスティヴァルを楽しむきっかけを提供し、シールを集めると恵比寿映像祭限定の記念品をプレゼントします。この機会にぜひ訪れてみてください。

シンポジウム|東京都写真美術館1Fホール、日仏会館

総合テーマ「あなたの音に|日花聲音|Polyphonic Voices Bathed in Sunlight」に沿って、映像や写真に関する多文化的な視点、言語の役割、そしてコミッション・プロジェクトおよび映像アーカイヴを深く掘り下げます。国内外から多彩な登壇者を迎え、多彩なシンポジウムを通じて、映像、写真と音が持つ多義性と可能性を多角的に考察します。