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ウィスット・ポンニミット

危口統之 / KIGUCHI Noriyuki
演出家。昭和50年倉敷市生。横浜国立大学建設学科卒。 演劇/パフォーマンス等を企画・上演する集団「悪魔のしるし」主宰。
hhttp://www.akumanoshirushi.com/

Q1. あなたにとってもっとも忘れがたい映像はなんですか?
A. テレビ番組「あなたの知らない世界」で紹介されていた、壁面に浮かび上がる顔の怪奇映像。 放映されたのはおそらく昭和55~56年。

Q2. 忘れがたい映像について理由を教えて下さい
A. 「最も忘れがたい映像」と問われ、思い浮かんだものはいくつかあるけれど、そのほとんどは、単に、いま思い出せる、思い出しやすいものでしか無いので除外します。
「忘れがたい」の「がたい(難い)」という部分に着目して考えれば、これはもう、自分で記憶に残そうと努めたり、忘れようと頭を振り払ったりしても無駄な、脳内にこびりついて自力ではどうすることもできないような固着化した記憶から選ぶべきで、となると、なるたけ昔のものから引っ張ってくるのがいい。
ただ、ここでひとつ問題が生じます。数十年前にまで記憶をたどっていくと、自分の眼で目撃した現実の出来事と、テレビや映画などを通して間接的に視聴した出来事との境目が希薄になってくるのです。これは考えだすと面白い問題ですが、前者を挙げだすときりがないので、これまた除外することにし、というわけで先に挙げた映像(体験)にしました。
息子が小学校に上がり手がかからなくなったこともあってか、母はパートタイム労働を始め、この頃の私は鍵っ子でした。普段は帰宅するやいなやランドセルを放って遊びに行くのが常だったのですが、この日は何故か、友達との約束もなかったのか、子供向け番組をやっているわけでもないのにテレビのスイッチを入れてしまい、この映像と正面衝突事故を起こしてしまったのでした。とある家の壁に浮かび上がる、人の顔のような模様を紹介する映像でした。すぐさまテレビを消し屋外に飛び出しました。そのまま宛てもなく町内をうろつきました。今のを無かったことにしたい、時間を巻き戻して帰宅するところからやりなおしたい、と後悔しながら。

最近、家をはじめとした空間、ひいては人間が発明し使っているもろもろの道具(言葉も含む)の、機能以外の側面について考えることが多いのですが、その根源を辿ればこの映像体験があるのではないかと思っています。この世にあるもの(名付けられたもの)は、そう在ることで一種のダムのような性質を持ち、本来は関係ないものまで溜め込んでしまう、といったようなことです。

Q3. あなたにとって「まだ見ぬ」映像とはなんですか?
A. 視野が350°もあるという馬の眼から周りを見渡してみたいです、けど、これは「映像」ではないですね。 ごめんなさい。よくわかりません。

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