COMMISSION PROJECT

コミッション・プロジェクト 無料

荒木悠

2023年2月3日 - 2023年3月26日 10:00-20:00 (2月19日以降は、木・金が20:00まで、その他の日は18:00まで) ※月曜休館

東京都写真美術館 3F 展示室

恵比寿映像祭2023委嘱制作作品
仮面の正体(海賊盤)
2023

荒木悠

《仮面の正体(海賊盤)》2023年、ダブルチャンネル・ヴィデオ・インスタレーション(LEDヴィジョン、液晶モニター、ステレオ、カラー) ©2022 Yu Araki

STATEMENT

ABOUT THE WORK

「コピーバンド」という言葉をご存知でしょうか。有名な曲を複製して演奏するバンドのことです。この動きは1950年代以降から世界的に広まったとされていて、バンド用に楽譜が市販されて流通する前の時代から盛んだったと言われています。ちなみに「コピーバンド」という言葉は和製英語であり、英語圏では「cover band」や「tribute band」といった呼び方が一般的です。大まかに違いを説明すると、原曲に対し独自のアレンジを加えて演奏するのが「カバー」、「トリビュート」は原曲通りの演奏を大前提とした上で、さらに衣装を揃えたり対象となるミュージシャンに成り切ることをも含みます。

本作《仮面の正体(海賊盤)》は、京都府南丹市八木町を拠点とするバンド・WISSの肖像画です。彼らは、アメリカのハードロックバンド・KISSのコピーバンドとして15年ほど活動してきました。2年前にあるご縁で彼らと出会った私は、以降WISSの追っかけをしています。原曲や世界観の再現において、本家KISSへの多大なる愛と敬意の表れはトリビュートそのものといえるでしょう。しかし、本家と異なりWISSの場合は5人編成であったり、メイクと楽器もメンバー間でシャッフルしていたりと、彼らなりの系譜があるのも見どころです。

展示形態は、2画面構成の映像インスタレーションになります。表側の巨大LEDヴィジョンに彼らのライブの様子がサイレントで輝かしく映し出され、裏側にはメンバーへのインタビューや普段の仕事、メイク中の記録映像などが流れています。舞台と楽屋、演奏と日常、メイクと素顔、いわばハレとケのような関係です。ただし、これらは完全に切り離されているわけではなく、地続きであり、徐々に変身していくあわいを楽しんでいただければと思います。

ライブ音源を使わなかったのはいくつか理由がありますが、コピーバンドの宿命ともいうべき著作権や複製権との関係を前景化させ考えてみたかったからです。兼ねてよりオリジナルとコピーの問題に関心を寄せてきましたが、改めてこの概念を二項対立では語ることが難しい、と思い至りました。オリジナルを忠実にコピーし、その差異を小さくしたところで、この2つの主従関係は変わりません。この関係性を転覆させるためには、本来一番の勝負どころであるはずの「演奏の質」を差し引いたときに見えてくる景色、いわば「複製行為そのものの本質」に私の興味関心がありました。一見音楽ドキュメンタリーを装いながらも、楽曲をあえて使わないという制限を設けた上で、WISSのオリジナリティやユニークネスに迫る、という趣向です。この試みが成功しているかはわかりませんが、ご鑑賞いただく上での補助線としてここに書き記しておきたいと思います。

[謝辞]
個人(敬称略)
関章|福嶋隆之|宅間裕晃|広瀬伸治|波部吉宏
関明子|梶本典子|広瀬優子|波部栄理子
八木志菜|八木敦史|國府美紀|秋田裕子|山口智子|廣瀬孝人|原勗|宮下忠也|八巻真哉|松井昌平|桑原芳郎
西口勲|西口シゲ子|宇野大輝|西村春美|三木俊郎
西野正将|忠聡太|スチュアート・ムンロ

団体
HAIR SALON せき|進和自動車工業|株式会社 波部畳店|株式会社 田村屋|株式会社 UNIXIA|みんなのTERAKOYAおおいがわ|京都南丹Yagi-JAM実行委員会|南丹市八木市民センター|京都:Re-Search実行委員会|無人島プロダクション

 

 

Artist

PAST WORKS

《双殻綱:第二幕》2022年、2チャンネル・HDヴィデオ(非同期ループ)、2チャンネル・サウンド、21分7秒、17分2秒
無人島プロダクションでの展示風景
撮影:森田兼次
Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

《HOME / AWAY》2021-2022年、3チャンネル・HDヴィデオ(同期)、カーペット、ベンチ、人工観葉植物、13分31秒
大阪中之島美術館での展示風景 撮影:小牧寿里
Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

《密月旅行》2020年、HDヴィデオ、穴あきスクリーン、サウンド、29分40秒
ポーラ美術館での展示風景
Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

《密月旅行》2020年、HDヴィデオ、穴あきスクリーン、サウンド、29分40秒
ポーラ美術館での展示風景
撮影:加藤健
Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

《The Last Ball》2019年、3チャンネル・HDヴィデオ(同期)、透過スクリーン、サウンド、10分34秒、31分44秒
資生堂ギャラリーでの展示風景
撮影:加藤健
Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

《戯訳「聖なる都・京都」、「日光霊山」、「江戸」》2019年、3チャンネル・HDヴィデオ、サイレント、5分12秒、18分10秒、18分37秒
資生堂ギャラリーでの展示風景
撮影:加藤健
Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

《LOST HIGHWAY (SWEDED)》2018年、HDヴィデオ、サイレント、22分9秒
ボルボ スタジオ青山での展示風景
Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

《複製神殿》2016年、2チャンネル・HDヴィデオ(同期)、サイレント、1分9秒ループ
国立ビザンチン・クリスチャン美術館での展示風景
写真提供:国際交流基金


《Fig.》2016年 、35mmスライド、スライドプロジェクター
横浜美術館アートギャラリー1での展示風景
Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

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